
更年期は、女性のライフステージの中でも大きな身体的・心理的変化が訪れる時期です。ホルモンバランスの乱れにより、さまざまな体調不良が現れるだけでなく、肌にも多くの影響が及びます。特にシミや乾燥、肌荒れといったトラブルは更年期特有の変化と関係しており、年齢とともに深刻化することもあります。
当記事では、更年期の肌に起こりやすいシミや肌のトラブルの種類とその原因、そして日常生活の中で取り組める具体的な対策方法について詳しく解説します。肌の変化に不安を感じている方や、今後のケア方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
記事の監修者

崔 煌植 医師
美容外科・皮膚科医
更年期とは、閉経の前後およそ10年間に該当する時期を指します。具体的には、閉経前の5年と閉経後の5年を合わせた期間であり、一般的には40代後半から50代前半にかけての期間です。
更年期に起こる大きな変化は、卵巣機能の低下に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量の急激な変動と減少です。エストロゲンは女性の心身の健康維持に関与するホルモンで、バランスが乱れると身体的・精神的にさまざまな影響が現れます。
また、加齢による体の変化や、家庭・職場での社会的な役割の変化なども重なり、個人差はあるものの心身に大きな影響を及ぼします。
更年期は、身体の変化だけでなく、心や環境の影響も複合的に関わる重要なライフステージです。
更年期に現れる症状は多岐にわたり、大きく3つの分類に分けられます。
なお、症状の程度や組み合わせには個人差があり、ほとんど影響を感じない人もいれば、生活に支障が出るほど深刻に悩む人もいます。背景に別の疾患が隠れている可能性もあるため、不安を感じたときは医療機関に相談しましょう。
更年期はホルモンバランスが大きく変化する時期であり、肌にもさまざまな影響が現れやすくなります。中でもシミや肌荒れといったトラブルが気になる方も多いでしょう。
トラブルの種類によって原因も異なるため、自分の肌状態を理解した上で、適切なケアを行うことが大切です。
肝斑は、30代以降の女性に多く見られる代表的なシミの一種で、更年期にも目立ちやすくなります。薄茶色で輪郭がぼやけたシミが、両頬の高い位置に左右対称に現れるのが特徴で、顔全体がくすんだ印象になることもあります。
肝斑には女性ホルモンの影響が大きく関与しているとされており、妊娠、出産、閉経前後など、ホルモンバランスの変化が起こるタイミングで目立ちやすくなります。また、肝斑は摩擦や物理的刺激に非常に弱く、洗顔時のこすりすぎやマスクの擦れなどが悪化要因となります。
日光性黒子は、紫外線ダメージの蓄積によって生じるシミで、加齢とともに目立ちやすくなる傾向があります。主に頬やこめかみ、手の甲など、紫外線を受けやすい部位に数ミリ~数センチの丸い斑点として出現し、次第に濃くなり境界がはっきりしてきます。
原因は、長年にわたり紫外線を浴びた結果、肌がダメージを受け、メラニン色素が過剰に生成されることです。加齢により代謝が低下すると、メラニンが排出されずに肌に残り、色素沈着として定着してしまいます。
予防には紫外線対策が欠かせません。日傘やUV加工の衣服、帽子の着用に加え、日焼け止めをこまめに使用しましょう。
雀卵斑(じゃくらんはん)、通称「そばかす」は、鼻や頬の周囲に細かく現れる茶色い斑点で、シミの一種とされています。直径は約1~4ミリ程度で、紫外線を浴びやすい場所に多く見られ、首や肩、デコルテなどにも発生することがあります。
そばかすは幼少期から現れ始め、10代の思春期にかけて濃くなる傾向があります。その後、加齢とともに目立たなくなることもありますが、紫外線やホルモンバランスの影響を受けると成人以降も再び濃くなるケースもあります。
発生の主な要因は、紫外線によるメラニンの過剰生成と、代謝機能の低下です。肌のターンオーバーが正常であれば、メラニンは自然に排出されます。しかし紫外線ダメージが蓄積されていたり、更年期によるホルモンバランスの乱れがあったりすると、代謝が滞り色素沈着が残り、そばかすが目立ちやすくなります。
脂漏性角化症は、加齢によって現れる良性の皮膚腫瘍で、「老人性イボ」とも呼ばれます。顔や頭部、手足など、紫外線を受けやすい部位に発生し、褐色から黒色を呈し、表面がやや盛り上がっているのが特徴です。40代以降に起こることが多く、80代ではほとんどの人に見られます。
原因は明確ではありませんが、加齢と紫外線の影響、さらに遺伝的な要素が関係していると考えられています。紫外線によって皮膚表面にメラニンが過剰に蓄積され、ターンオーバーが遅れることで皮膚表面に色素と角質が盛り上がる形で残ります。
美容上の理由で除去を希望する場合は、医療機関での処置が必要です。日常的な紫外線対策の徹底が、予防の観点からも大切です。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)は、頬骨部や額、こめかみなどに青灰色~茶褐色の色素沈着が現れる皮膚疾患で、主に成人女性に多く見られます。左右対称に出現することが多く、色調がまだらなのが特徴です。見た目が肝斑に似ているため、医療現場でも診断が難しいケースがあり、適切な治療を行うには専門的な判断が必要です。
原因は完全には解明されていませんが、遺伝的素因やホルモンバランスの変化、紫外線の影響、外傷や炎症などが複合的に関与していると考えられています。特にエストロゲンの変動が影響するため、更年期や妊娠中、経口避妊薬の使用時期に現れることが多いとされています。
更年期において多くの女性が経験する肌の悩みの1つが乾燥肌です。女性ホルモンは皮膚の水分量を保持し、ハリや弾力を支えるコラーゲンの生成にも関与しています。エストロゲンの減少によって皮膚の保湿力が弱まり、乾燥やかゆみなどが現れやすくなります。
こうした乾燥は「ドライシンドローム」とも呼ばれ、肌の乾燥だけでなく、口内や目、腟などの乾燥も含まれることがあります。対策としては、肌への刺激を減らしながら、十分な保湿を行うことが大切です。毎日のスキンケアでうるおいを補い、乾燥による肌荒れを防ぎましょう。
更年期には、女性ホルモンの急激な減少により、抜け毛が目立つようになることがあります。女性ホルモンの1つであるエストロゲンは、髪の成長を維持する役割を担っており、その分泌が減少すると、毛髪の成長期が短くなり、休止期の髪が増加します。これによって抜け毛が増え、全体的に髪が薄く見える「びまん性脱毛症」の原因となります。
加齢に伴い、髪の毛は細く、ハリや艶も失われがちになります。結果として、髪がごわついたり、パサついたりしやすくなり、ボリュームの低下や白髪の増加も目立つようになります。
抜け毛の程度や期間には個人差がありますが、生活習慣の見直しや頭皮ケア、必要に応じた医療機関での相談が大切です。ホルモンの変化だけでなく、複数の要因が重なっていることもあるので注意しましょう。
更年期には、思春期とは異なる仕組みでニキビ(吹き出物)が発生しやすくなります。主な要因は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少に伴う皮脂分泌量やターンオーバーの乱れだとされています。更年期にエストロゲンの分泌が減ることで乾燥が進み、皮脂分泌の調整が難しくなります。
さらに、更年期に多くなるストレスや生活習慣の乱れ、自律神経の乱れも更年期ニキビの原因です。皮脂を過度に除去せず、適切な保湿を心がけることが、更年期ニキビの予防とケアには欠かせません。
更年期に入ると、これまであまり気にならなかったシミが目立ち始めることがあります。シミの発生には、加齢の影響だけでなく、女性ホルモンの変化やターンオーバーの乱れ、肌のバリア機能の低下など、複数の要因が複雑に関係しています。
ここでは、更年期にシミができやすくなる主な原因を項目ごとに詳しく解説します。
更年期におけるシミの原因の1つに、女性ホルモン(特にエストロゲン)の減少があります。エストロゲンには、肌の水分保持やコラーゲン生成を促す働きがあるとされています。エストロゲンが減少すると肌は乾燥しやすくなり、外部刺激に対して無防備な状態になるとされています。
紫外線対策をしていても、ホルモンの内的変化によってシミができやすくなるため、更年期以降の肌では従来以上に注意が必要です。
肌は通常、約28日周期で新しい細胞に生まれ変わるターンオーバー(新陳代謝)を繰り返しています。しかし、更年期になるとターンオーバーの周期が遅延し、サイクルの乱れによって肌表面に古い角質が残りやすくなります。
紫外線を浴びた際に発生するメラニンは、本来なら新陳代謝によって自然に角質とともにはがれ落ちる仕組みです。しかし、代謝が落ちるとメラニンが肌に長くとどまり、色素沈着として定着してしまうのが、シミの原因となります。
年齢を重ねると、肌の表面にある角層の水分保持能力が低下し、乾燥しやすくなります。この乾燥によって肌のバリア機能が弱まり、紫外線や摩擦などの外的刺激に対して敏感になります。特に更年期には、エストロゲンの減少によって皮脂分泌やセラミドの生成も低下するので、バリア機能が著しく損なわれます。
バリア機能が低下した状態では、紫外線が皮膚の奥まで侵入しやすくなり、メラノサイトが過剰にメラニンを生成します。バリア機能を高めるためには、十分な保湿と肌に負担をかけないスキンケアが欠かせません。
更年期は心身ともに大きな変化が生じ、ストレスが蓄積しやすい時期です。ホルモンバランスの乱れや生活環境の変化、家庭や仕事の悩みなど、精神的負担が増すと、自律神経が乱れやすくなります。これにより、交感神経が優位な状態が続くと、体内で男性ホルモン(アンドロゲン)が優位になり、皮脂分泌が過剰になることがあります。
皮脂の過剰分泌は詰まりや炎症を引き起こし、活性酸素の生成にもつながります。この活性酸素はメラニンの生成を促進し、シミやくすみを悪化させる要因であるとされています。
ストレス軽減のためには、良質な睡眠、栄養バランスの取れた食事、適度な運動など、心身のケアが大切です。体を内面から整えることが、美しい肌への第一歩となります。
更年期の肌に対する悩みは、スキンケアや生活習慣の見直しによって軽減できます。ここでは、更年期特有の肌の悩みを解消するために、日常生活で実践できる対処法を紹介します。
更年期に入ると、エストロゲンの急減により肌の水分保持力やバリア機能が大きく低下します。これまでのスキンケアでは十分に対応できないこともあるので、更年期特有の肌変化に適した新たなアプローチが必要です。
保湿ケアには、LPSやセラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなど、肌にうるおいを与える成分が配合されたスキンケアアイテムが効果的です。従来の化粧水中心の保湿だけでなく、これらの成分を取り入れたケアを行うことで、肌のバリア機能を保ち健やかな状態を目指すことができます。
洗顔時にゴシゴシこすると、角層を傷つけて肌のバリア機能を低下させてしまいます。バリア機能が弱まると、紫外線や乾燥の影響を受けやすくなり、シミや肌荒れを引き起こす原因になるので、洗顔する際はこすりすぎないよう気をつけましょう。
また、すすぎは32~33℃程度のぬるま湯を使い、皮脂を取りすぎないようにします。摩擦を避けることで、肌の負担を減らし、健やかな肌を保ちやすくなります。
紫外線はシミやくすみの大きな要因です。更年期の肌は紫外線のダメージを受けやすいため、季節や天候にかかわらず、日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。外出時は、帽子や日傘、サングラスなどのアイテムを活用することも大切です。
また、室内でも紫外線は窓を通して届くので、在宅時にもUVカット効果のある下地やスキンケアを使用しましょう。紫外線の積み重ねが将来的なシミにつながるため、日々の予防が大切です。
肌の健康は、体内からの栄養補給によっても支えられます。シミや肌荒れを防ぐには、抗酸化作用のあるビタミンA・C・Eや、大豆イソフラボンなどを含む食材を積極的に摂取しましょう。
偏った食事は肌荒れの原因になるため、バランスのよい献立を意識し、ナッツ類や緑黄色野菜、果物などを毎日の食事に取り入れることが大切です。
生活リズムの乱れはホルモンバランスや肌のターンオーバーに影響を及ぼします。夜更かしや不規則な食事によって成長ホルモンの分泌が乱れると、肌の再生力を低下させる原因になります。
特に就寝後3時間に分泌される成長ホルモンは、肌の修復に重要な役割を担っているため、この時間帯に質のよい睡眠を取ることが大切です。一定のリズムを保った生活が、肌の調子を整える基本になります。
ストレスは活性酸素の増加やホルモンバランスの乱れを引き起こし、シミや肌荒れにつながります。仕事や家庭でのストレスをため込みすぎないよう、適度な運動や趣味、リラックスタイムを取り入れることが大切です。アロマや音楽、ストレッチなど、自分に合ったリフレッシュ方法を見つけ、こまめにストレスを発散すると、自律神経の乱れを防ぎ、肌の健康にもつながります。
自己ケアでは改善が難しいシミや肌荒れが続く場合は、早めに皮膚科や美容クリニックを受診するのが安心です。現在の悩みに応じて、内服薬や外用薬、レーザー治療などの適切な治療法を提案してもらえます。専門家の力を借りることで、肌悩みの原因を的確に見極め、効果的なケアが可能になります。
更年期のシミや肌のトラブルは、加齢や紫外線だけでなく、ホルモンバランスの乱れやストレス、生活習慣の影響も大きく関係しています。肌の状態は人それぞれ異なるため、自分の変化をよく観察しながら、スキンケアや生活習慣を見直すことが重要です。
特に保湿や紫外線対策、栄養バランスの取れた食事は、肌の健康を保つ基本として欠かせません。また、心身の安定を意識しながら、ストレスケアや規則正しい生活を心がけることも、肌荒れの予防につながります。
更年期は変化の時期であると同時に、自分の体と丁寧に向き合う大切な時間です。正しい知識とケアで、心地よい毎日を目指しましょう。
記事の監修者
崔 煌植 医師
美容外科・皮膚科医
経歴
・大阪府済生会千里病院
・大手美容クリニック大型院院長
・美容クリニック技術指導医
・崔先生の糸リフト塾代表
・SAI CLINIC 院長
所属
・韓国美容外科医学会 (KAAS)
・日本美容外科学会 (JSAS)
エイジングケア・たるみ治療のスペシャリスト。糸リフトは症例件数10,000件以上、SBCベストショットアワードなど数々の賞を受賞。
オーソモレキュラー栄養療法と美容医療を融合し、体の内側と外側の両方からアプローチすることで自然な健康美を目指すSAI CLINICを大阪梅田で開院。
特にミドル世代からの支持が厚く、県外からのリピーターも多い。