年齢を重ねるにつれて、シミの悩みは深刻になっていきます。特に50代では、若い頃の日焼けやホルモンバランスの変化、生活習慣の乱れなど、さまざまな要因が積み重なり、複数種類のシミが混在することも少なくありません。肝斑やそばかす、老人性色素斑、ADMなど、それぞれ原因やケアの方法が異なるため、正しく見極めた上での対策が必要です。
当記事では、50代に見られやすいシミの種類や原因を詳しく解説するとともに、保湿や紫外線対策、生活習慣の改善といった日常でできる対処法を紹介します。
目次
記事の監修者
崔 煌植 医師
美容外科・皮膚科医
50代になると、加齢やホルモンバランスの変化、紫外線の蓄積などにより、さまざまな種類のシミが目立ちやすくなります。シミとひと口にいっても種類によって原因や見た目が異なり、適切なケア方法も異なります。以下では、50代に多く見られるシミの代表的な種類と、それぞれの特徴・原因について解説します。
肝斑(かんぱん)は、50代以降に気になりやすい肌の変化の1つです。頬骨のあたりや額、口もとにかけて、左右対称に広がる淡い褐色の色素沈着が見られ、目のまわりには出にくいことが特徴とされています。境界がぼやけており、ふんわりとした形で現れるのが一般的です。
加齢に伴う肌の変化の一種とされ、紫外線の蓄積的な影響や、ライフステージに伴うホルモンバランスの変動、精神的ストレスなどとの関係が指摘されています。50代ではこれらの要因が複合的に重なりやすくなるため、肝斑が目立ちやすくなる傾向にあります。
老人性色素斑は、加齢とともに現れやすい代表的なシミの1つで、別名「日光性色素斑」とも呼ばれています。紫外線を浴びた部位、特に顔や手の甲などに、茶褐色で輪郭のはっきりした斑点ができるのが特徴です。
紫外線によるメラニンの蓄積と加齢に伴う肌の代謝機能(ターンオーバー)の低下などが主な原因です。これらの影響が重なることで、徐々に肌表面に色素が現れるようになります。個人差はありますが、40代以降から気になりはじめる方が多く、紫外線にあたる機会が多い方は20代から見られるケースもあります。
ADMとは「後天性真皮メラノサイトーシス」の略で、真皮層に色素細胞が存在することによって起こる色素斑の一種です。灰色や青みがかったくすんだ色調で、両頬の上部や小鼻、目の下などに左右対称に現れることが多い点が特徴とされています。
一般的には20歳前後から見られ、10代で見られることも少なくありません。シミやそばかす、肝斑との違いとして、色調や出現時期、分布形態などが挙げられます。現時点で明確な原因は解明されていませんが、遺伝的要因や紫外線、ホルモンバランスなどの影響が関係している可能性があると考えられています。
そばかすは、医学的には「雀卵斑(じゃくらんはん)」と呼ばれ、顔の中心部や肩・腕などにできる小さな茶色の斑点を指します。1mm~4mmほどの大きさで、鼻や頬などに左右対称に点在するのが特徴です。肝斑や老人性色素斑と異なり、境界が比較的はっきりしており、幼少期から思春期にかけて濃くなる傾向にあります。
主な原因は遺伝的な要素とされており、家族にそばかすがある場合は出やすいです。また、紫外線を浴びることで色が濃くなる場合もあります。色白の方や皮膚が薄い方は目立ちやすい傾向があるため、日常的な紫外線対策を意識することが大切です。
脂漏性角化症は、「老人性いぼ」とも呼ばれる加齢とともに増える良性腫瘍で、40代以降に多く見られ、80代以上ではほぼ全員に現れるとされています。紫外線の影響や皮膚の変化が主な原因とされており、遺伝的な要因が関与する可能性もあります。
顔、頭、胸元、背中など、紫外線があたりやすい部位にできやすく、色は褐色から黒色で、わずかに盛り上がっているのが特徴です。通常は痛みを伴いませんが、まれにかゆみを感じる場合もあります。自然に消えることはなく、短期間で多数発生したときは、念のため医療機関への相談が望まれます。
炎症後色素沈着とは、やけどやけが、ニキビなどの炎症後に、同じ部位に灰褐色や茶褐色の色素が残る状態です。ニキビや虫刺され、脱毛処理、ヘアアイロンのやけどなどがきっかけで起こりやすく、患部を繰り返しこすったり触れたりすることで長引くこともあります。
一般的に色素沈着はターンオーバーにより徐々に薄くなりますが、肌の状態や炎症の深さによっては数か月以上残ることもあります。美容目的での悩みが多く、悪化を防ぐためには、刺激を避け、紫外線対策を心がけることが大切です。
50代になると肌の代謝が低下し、シミが目立ちやすくなるため、日常的なケアがより重要になります。保湿や紫外線対策の徹底、生活習慣の見直しといった基本的な対処を積み重ねることで、シミの悪化や新たな発生を防ぐことが可能です。
以下では、日常でできる対処法について紹介します。
50代の肌は水分保持力が低下しやすく、若い頃と同じケアでは十分な保湿が得られません。乾燥が進むとバリア機能が弱まり、外部刺激を受けやすくなります。
そのため、保湿は化粧水だけでなく美容液を中心に行うケアが効果的です。ヒアルロン酸やセラミド、コラーゲンなどの保湿成分を豊富に含んだ美容液を使い、角質層までしっかり潤いを届けることが大切です。
肌に潤いを与えることで、乾燥による色素沈着のリスクを減らすことにもつながります。毎日のスキンケアでは高保湿タイプの基礎化粧品を選び、丁寧な保湿を習慣化するようにしましょう。
50代のシミ対策では、日焼けは肌への負担となる可能性があるため紫外線を防ぐことが基本です。日焼け止めは毎日使用し、顔の凹凸に合わせてムラなく塗布し、鼻や頬骨、額、あご先など突出部分は特に念入りに保護しましょう。
肌が敏感な方は、低刺激設計のものを選ぶとよいでしょう。日常使いにはSPF30・PA+程度で十分ですが、屋外では数値の高いものを使用し、帽子や日傘、サングラスも活用することで紫外線からの影響を抑えられます。
50代の肌はターンオーバーの乱れによってシミができやすくなるため、生活習慣の見直しも大切です。バランスの良い食事、質の良い睡眠、適度な運動によってホルモンバランスを整え、肌の代謝を正常化しましょう。
また、ストレスは肌の調子に影響を与える可能性があるため、入浴や趣味を通じてリラックスする習慣を取り入れるとよいでしょう。ビタミンCを多く含む食品やサプリメントによる、体の内側からのケアも効果的です。一方で、喫煙やカフェインの過剰摂取は肌への負担となる可能性があるため、控えることが望まれます。
セルフケアで改善が見られないシミには、皮膚科や美容クリニックでの治療が有効です。医療機関では、肌質に合わせてさまざまな治療法が用意されています。自宅ケアと併用することで、予防と再発防止にもつながります。
代表的なクリニックでの治療法は以下の通りです。
薬の処方 | 医師の判断により、肌の状態に合わせて内服薬や外用薬が処方されます。 |
レーザー治療 | メラニンをターゲットとしたレーザー照射が行われ、医療機関でのみ実施されます。 |
レチノイン酸治療 | 医師の処方に基づき使用される薬剤で、肌の状態に応じた濃度が用いられます。 |
マッサージピール | 特定の薬剤を用いて肌をケアする施術で、美容医療の一環として行われています。 |
50代のシミ対策では、スキンケア成分の選び方に加え、使い方や塗布の方法も重要です。肌の代謝が低下する年代だからこそ、スキンケアでは以下のポイントを意識しましょう。
■シミ対策スキンケアのポイント
毎日の積み重ねが、将来のシミの出方に大きく影響を与える可能性があります。肌への負担を抑えつつ、化粧品成分をうまく取り入れてケアを続けることが大切です。
50代のシミは、肝斑や老人性色素斑、そばかすなど種類が多様で、紫外線の蓄積や加齢による代謝低下、ホルモンバランスの変化が主な原因となります。対策として重要なのは、保湿の徹底と紫外線対策の継続です。ヒアルロン酸やセラミド、LPSなどを含む美容液での保湿、毎日の日焼け止め使用に加え、バランスの良い食事や質の高い睡眠などの生活習慣改善も意識しましょう。
また、スキンケアでは摩擦を避け、ビタミンC誘導体やトラネキサム酸、LPSなどの成分を活用することが効果的です。セルフケアで改善が見られない場合は、皮膚科や美容クリニックでの専門的な治療も検討し、複合的なアプローチでシミ対策を行うのもよいでしょう。
記事の監修者
崔 煌植 医師
美容外科・皮膚科医
経歴
・元大手美容クリニック大型院 院長
・サラクラアズクリニック 技術指導医
・AND美容外科心斎橋院 院長
・「サイ先生の糸リフト塾」 代表・講師
所属
・韓国美容外科医学会 (KAAS)
・日本美容外科学会 (JSAS)
アンチエイジング・たるみ治療のスペシャリスト。
特にミドル世代からの支持が厚くファンも多い。
得意施術の「糸リフト」は症例件数10,000件以上(西日本 1位)、ベストショットアワードなど数々の賞を受賞。複数の美容クリニックで院長・技術指導医・監修医を兼任する傍ら、糸リフト実践セミナー講師として全国の美容ドクターの技術指導に携わる。