
更年期に入ると、乾燥や赤み、かゆみ、吹き出物などが急に現れたり、肌の調子が整わなくなったりするといった肌の変化に悩まされる方もいます。
更年期の肌荒れ原因の1つは、女性ホルモンの急激な変化によって、肌のバリア機能が弱まり、外部刺激に対して過敏になることです。さらに、加齢によるターンオーバーの乱れや生活習慣の影響も加わると、肌荒れのリスクが高まります。
この記事では、更年期に特有の肌荒れの原因と代表的な影響、日常生活で取り入れやすいスキンケアや生活習慣について解説します。
目次
記事の監修者

崔 煌植 医師
美容外科・皮膚科医
更年期に肌荒れが起こる原因の1つは、女性ホルモンの急激な変動です。
女性が更年期になり閉経するとエストロゲンの分泌量が減少することで、肌の水分や皮脂のバランスが崩れやすくなります。エストロゲンは、肌のうるおいやハリを保つ役割を担う女性ホルモンです。エストロゲンが減少すると、肌の乾燥やバリア機能の低下につながり、外部刺激による影響を受けやすくなります。
加えて、自律神経の乱れや血流の低下から、肌のターンオーバーが遅くなることも、肌荒れを招く一因です。ターンオーバーのスピードが鈍ると、肌に古い角質が残り、くすみやごわつき、シミの原因となることがあります。さらに、真皮のコラーゲンやヒアルロン酸の減少も進みやすくなり、ハリの低下や小ジワが目立つようになります。
更年期の肌は水分・皮脂ともに不足しやすく、デリケートな状態です。日常的なケアを丁寧に行うことが、肌の健やかさを保つためには欠かせません。
更年期は、閉経の前後5年ずつを合わせたおおよそ10年間を指し、一般的には45~55歳頃が更年期にあたると考えられています。
ただし、その時期や続く期間には個人差があり、50代後半になると落ち着く人が多い一方で、60歳をすぎても続く方もいます。ホルモンの急激な変化だけでなく、環境やストレスの影響も関連しており、心身の状態によってその強さや期間が変わることもあります。
そのため、更年期がいつ終わるかは一概には言えません。体調の変化に気づいた際は、無理をせず生活を整えることが大切です。
更年期は敏感肌へと肌質が変わり、乾燥、かゆみ、吹き出物、赤みなどに悩む方もいます。これらは主に、女性ホルモンの減少によって肌の水分や皮脂のバランスが乱れ、バリア機能が低下することで引き起こされます。
肌の乾燥は更年期に起こりやすい代表的な肌トラブルです。エストロゲンの分泌が減ることで皮脂や保湿成分の分泌も減少し、角層(肌表面のバリア機能をつかさどる部分)が乱れて肌のうるおいが保てなくなります。その結果、肌がつっぱったり粉を吹いたりといった肌の乾燥が見られることがあります。
乾燥状態が続くと、ファンデーションのノリが悪くなる、肌がゴワつく、細かいシワやたるみが目立つなど、見た目にも変化が生じやすくなるため、早めの保湿ケアが大切です。
更年期の乾燥によって肌のバリア機能が弱まると、衣類や化粧品など、それまではなんともなかったちょっとした刺激でかゆみやヒリヒリを覚えやすくなります。特に入浴後や季節の変わり目に強く感じられるので、お風呂上がりに体がかゆく感じる場合、肌が敏感になっている可能性があります。
また、これまで問題なかった化粧水やクリームが突然しみるようになる方もいます。こうした場合は、スキンケア製品を見直し、低刺激の保湿アイテムに切り替えるなどの対応を検討するとよいでしょう。
更年期にできる吹き出物は、口のまわりやフェイスラインに現れることが多く、大人ニキビに似た特徴を持ちます。肌のターンオーバーが乱れた結果、肌の角質が残って毛穴を塞ぎ、炎症を起こしやすくなるのが、更年期のブツブツや吹き出物の原因の1つです。
また、肌のバリア機能が低下した状態では、普段使っている化粧品でも刺激となり、吹き出物の原因になってしまうことがあります。洗顔やスキンケアの際の摩擦にも注意しましょう。
更年期には、紫外線やホコリ、花粉といった外部刺激に過敏に反応して肌の赤みも現れやすくなります。バリア機能の低下によって外部の刺激から肌を守ろうと免疫反応が働き、血管が拡張して赤みが起きると考えられています。
特に、乾燥で肌が薄くなっている場合、赤みが目立ちやすくなるので注意が必要です。長引くと色素沈着などの跡が残ることもあるため、日常的な保湿や紫外線対策が大切です。
更年期の肌荒れに対しては、肌の状態に応じたスキンケアを心がけるとともに、生活習慣の見直しも欠かせません。肌のバリア機能を補いながら、外的刺激から守る対策を行いましょう。
肌のバリア機能には、まず基本となる保湿ケアの見直しが大切です。洗顔後には、化粧水・美容液・乳液・クリームなど複数の保湿アイテムを重ねて使い、角層に水分と油分を丁寧に補いましょう。異なる質感のアイテムを重ねることで、水分の蒸発を減らし、肌のうるおいをキープしやすくなります。
また、洗顔時は32~33℃のぬるま湯を使用し、洗顔料でこすらずやさしく洗うことも大切です。
さらに注目したいのが、保湿や肌のバリア機能をサポートするとされる成分です。LPSやセラミド、ヒアルロン酸などは、潤いを守り肌を健やかに保つ美容液成分です。これらの成分を含む製品を日々のスキンケアにプラスすることで、よりすこやかな肌を目指すことができます。
毎日のスキンケアを丁寧に行いながら、適切な成分を取り入れることで、更年期のゆらぎやすい肌を内外から整えていけるでしょう。
入浴時の温度が高すぎると、肌に必要な皮脂まで奪われ、乾燥を悪化させる原因になります。肌への刺激を抑えるためには、40℃未満のぬるめのお湯に10分程度浸かるのがよい方法です。また、ゴシゴシと体をこするように洗うことも避け、必要以上に石けんを使わない日を設けるのもよいでしょう。
入浴後はなるべく早く、顔だけでなく全身に保湿剤を塗るのが望ましいです。水分が蒸発する前に保湿することで、肌の乾燥を感じにくくなると言われています。乾燥しやすい季節は加湿器なども活用し、室内の湿度にも気を配るとよいでしょう。
紫外線は肌にダメージを与える大きな要因です。更年期の肌はバリア機能が弱くなっているため、紫外線の影響を受けやすくなっています。買い物やゴミ出しなど、わずかな外出時でも日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。
日焼け止めはSPFやPAの数値だけでなく、肌へのやさしさも考慮して選ぶことが大切です。また、帽子・日傘・UVカットの衣類なども併用することで、物理的な紫外線対策を強化できます。室内でも窓越しの紫外線に注意が必要なため、日中は在宅時にもUVケアを意識しましょう。
更年期の肌荒れは、スキンケアだけでなく生活習慣の影響も大きく受けます。特に食事・睡眠・ストレス管理は重要です。栄養が偏った食事、特に糖分・脂質の摂りすぎは肌荒れの原因になるため、ビタミンA・B群・C・E、ミネラル、たんぱく質、食物繊維を豊富に含む食品を取り入れた、バランスのよい食事を意識しましょう。
また、質の高い睡眠をとることで、睡眠中に分泌される成長ホルモンによって肌のコンディション維持に役立つとされています。スマートフォンの使用を控える、寝室の照明を落とすなど、睡眠環境の整備も大切です。さらに、ストレスをためすぎないよう、運動や趣味などで気分転換をはかることも、肌の状態を良好に保つための習慣として推奨されています。適度な運動習慣を身につければ、自律神経のバランスが整い、血行不良を改善できる可能性が高まります。
更年期には、ホルモンバランスの変化と加齢による肌機能の低下が重なって肌荒れが起きやすくなります。肌の乾燥やかゆみ、吹き出物、赤みといったトラブルは、どれも共通して肌のバリア機能の低下がかかわっており、更年期の肌は外部刺激に対する抵抗力が弱まっている状態です。
保湿ケアや紫外線対策に加え、生活習慣全般を整えることが、更年期の肌を健やかに保つために有効と考えられています。肌にやさしいアイテム選びや、日常の小さな行動の積み重ねが、肌荒れの悩みを軽くすることにつながります。
記事の監修者

崔 煌植 医師
美容外科・皮膚科医
経歴
・元大手美容クリニック大型院 院長
・サラクラアズクリニック 技術指導医
・AND美容外科心斎橋院 院長
・「サイ先生の糸リフト塾」 代表・講師
所属
・韓国美容外科医学会 (KAAS)
・日本美容外科学会 (JSAS)
アンチエイジング・たるみ治療のスペシャリスト。
特にミドル世代からの支持が厚くファンも多い。
得意施術の「糸リフト」は症例件数10,000件以上(西日本 1位)、ベストショットアワードなど数々の賞を受賞。複数の美容クリニックで院長・技術指導医・監修医を兼任する傍ら、糸リフト実践セミナー講師として全国の美容ドクターの技術指導に携わる。