肌のかゆみに悩んでいる方は、肌が乾燥しているのかもしれません。実は、乾燥肌とかゆみは密接な関係があるのです。
この記事では、乾燥肌の原因、かゆみが発生するメカニズム、かゆみを抑える方法、乾燥肌の改善方法などを解説します。肌のつらい乾燥やかゆみに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
記事の監修者
竹内 想
皮膚科医
乾燥肌とは、肌の水分量が低下することで潤いが不足し、常に肌が乾燥した状態になることを指します。肌の水分量が減少しているので、表面にツヤがなくなり、かさついたり粉を吹いたりする、という方もいます。乾燥肌を放置していると、化粧のノリが悪くなったり、少しの刺激にも敏感になったりしてしまいます。
次の項目からは、乾燥肌の原因を紹介します。肌トラブルに対処するために、原因を把握しておきましょう。
乾燥肌に悩んでいるのであれば、最初に見直したいのがスキンケアと洗顔です。洗浄力の強い洗顔料を使用して必要以上に顔を洗ったり、肌を強くこすったりすることは逆効果です。過剰な洗顔が乾燥肌の原因になることもあります。また、洗顔後に十分な保湿をせずに放置するのも要注意です。
紫外線は肌の大敵です。紫外線を浴びると肌の水分が奪われるほか、紫外線は肌表面の角質層にもダメージを与えるので、肌を守るバリア機能が低下し乾燥肌になります。バリア機能の低下は乾燥肌以外に、敏感肌にもつながるので注意しましょう。
老化もまた肌の大敵です。年齢を重ねるごとに肌内部の水分量や水分の蒸発を防ぐ皮脂の分泌量が減るので、肌が乾燥した状態になりやすいです。さらに、潤い成分である天然保湿因子や角質細胞間脂質の量も減少するため、肌のツヤも失われていきます。
日本には、湿度が低い季節があります。秋冬は空気が乾燥しやすいので肌の水分が奪われがちで、湿度の高い夏であっても、エアコンによって室内の湿度が下がると肌が乾燥してしまいます。皮脂や汗は肌を守る機能もありますから、湿度が低い環境で長時間過ごすのは避けたほうがよいでしょう。
美しい肌を維持するためには、生活習慣を整えることが大切です。睡眠不足、不規則な生活、食生活の乱れは肌の新陳代謝を妨げてしまいます。そうなると肌の回復が遅れるうえにバリア機能も低下してしまうので、乾燥肌や敏感肌の原因となります。特に、睡眠不足は新陳代謝を促す成長ホルモンの分泌が滞るので注意してください。
皮膚の病気が原因で乾燥肌になることもあります。乾燥肌を引き起こす疾患を紹介します。
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が体のさまざまな部位にできる皮膚疾患です。成人では湿疹を半年以上繰り返すとアトピー性皮膚炎が疑われます。アトピー性皮膚炎は肌のバリア機能が低下して水分が蒸発しやすくなるため、乾燥肌の原因になります。
魚鱗癬は、全身の肌が強く乾燥することで皮膚の表面がひび割れたり、まるで魚の鱗のように皮が剥けたりする疾患です。先天的な遺伝で発症することもあれば、病気や薬をきっかけに発症することもあります。アトピー性皮膚炎と合併して見られることもあります。
それでは、乾燥するとなぜかゆみを感じるのでしょうか。乾燥肌にかゆみが起こりやすい理由を解説します。
かゆみは、生体防衛反応の一種です。人間の体は、肌に異物が付着するとその異物を除去しようとします。そのために、まずは脳が異物の付着によって発生する刺激を感知します。刺激を感知すると、かゆみ物質を分泌します。さらにそのかゆみ物質が知覚神経の末端に伝わると、脳が「かゆい」と認識し、かゆみを感じるのです。
肌が乾燥するとかゆみを感じるという方がいます。その理由は、角質層の水分量が減ると肌を守るバリア機能が低下し、外部からの刺激や異物に反応しやすくなるからです。また、慢性的に外部刺激を受け続けると、かゆみを感知する知覚神経が肌表面の近くまで伸びるという現象が起こり、よりかゆみを感じやすくなってしまいます。
皮膚の乾燥が原因で起こるつらいかゆみですが、ここでは乾燥肌のかゆみを抑える方法を紹介します。
かゆみは、知覚神経の働きによるものです。そのため、患部を冷やして一時的に知覚神経の活動を抑えると、かゆみを感じづらくなる効果が期待できます。タオルで包んだ氷や保冷剤、冷水で濡らしたタオルを使用して冷やすほか、患部に直接流水をかけるでもよいです。ただし、あくまで一時的な対処です。
かゆみには、薬の使用が有効です。一般的に「かゆみ止め」と呼ばれる市販の塗り薬があるので、どうしてもかゆみを我慢できないというときは使用してみましょう。かゆみ止めには、かゆみを止める成分、炎症を抑える成分、バリア機能を回復させる成分などが配合されています。
乾燥肌特有のかゆみがあるときには、注意が必要なポイントがあります。
患部をかきむしったり、叩いたり、こすったりすると、その刺激でかゆみ物質が分泌されてしまいます。さらに、かくことでバリア機能が低下すると刺激を感じやすくなり、さらにかゆみが増してしまうことも。乾燥肌が原因でかゆみを感じているときには、できる限り肌を刺激しないようにしましょう。
かゆみが強い、改善しない、繰り返す、原因がわからないなどの状態であれば、医療機関の受診を検討しましょう。深刻なかゆみは、内臓疾患が原因となって起きている場合もあります。また処方薬と市販薬では使用可能な成分が異なり、処方薬のほうが医師の診察を必要とする分高い効果が期待できます。医療機関の受診はかゆみを治すだけでなく、大きな病を早期発見することにもつながります。
それでは、乾燥肌のかゆみを防ぐにはどうしたらよいのか、具体的に紹介します。
乾燥が原因で発生するかゆみを防ぐためには、しっかりと保湿することが大切です。洗顔後は角質層がふやけて、バリア機能が低下します。さらに、皮脂膜が洗い流されることで水分が蒸発しやすい状態になっており、洗顔後は乾燥とかゆみが起きやすい状態です。顔を洗ったらすぐに保湿ケアをして、肌を守りましょう。
乾燥肌のかゆみを防ぎたいと考えているなら、洗顔後の保湿だけでなく、洗顔の方法にもこだわりましょう。肌をこすらないように洗い、ぬるま湯ですすいでください。洗顔後はタオルで軽く押さえて余分な水分を取り除きます。
睡眠不足は肌の新陳代謝を妨げてしまいます。肌の新陳代謝が低下するとバリア機能も低下してしまい、乾燥肌やかゆみの原因となります。また、睡眠は肌バランスを整えるのに重要なので、十分な睡眠時間と規則正しい睡眠は、美肌を手に入れるためにも重要です。
乾燥やかゆみのない健康な肌を維持するためには、栄養バランスのよい食事や規則正しい食習慣を意識することも重要です。栄養不足や栄養の偏りがあると、肌のバリア機能や回復力が低下してしまいます。たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラルなどの栄養素を意識して、健康的な食生活を心がけましょう。
肌のかゆみの原因は乾燥肌かもしれません。もし肌の乾燥やかゆみに悩んでいるなら、睡眠や食事などの生活習慣を見直すとともに、正しい手順での洗顔とスキンケアを実践する必要があります。特に、今の肌の状態に合ったスキンケア商品を選ぶことも重要です。
※医師の記事監修は医学的内容に関する部分のみ行っており、特定の商品についての効果を保証するものではありません。
記事の監修者
竹内 想
皮膚科医
2016年に大学を卒業後、市中病院での初期研修を経て現在は皮膚科医として複数の病院やクリニックで外来診療を行う。皮膚科医として専門的な内容をわかりやすく伝えることに重点をおき、WEB記事監修や執筆を行っている。