基礎化粧品は直接肌に使うものだからこそ、配合成分にこだわりたい人は多いでしょう。特に敏感肌の場合は、化粧品の添加物が刺激になることも少なくありません。美容に関心を持つ女性を中心に無添加・ナチュラルのコスメが人気を集めている傾向にあることから、最近はパラベンフリーの化粧品も数多く販売されています。
当記事では、パラベンフリーの特徴やメリット・デメリット、パラベンフリー化粧品の防腐対策について解説します。肌荒れを防ぐなら、スキンケアにパラベンフリー化粧品も選択肢に入れると安心です。まずは、パラベンフリーに関する基礎知識を押さえておきましょう。
記事の監修者
崔 煌植 医師
美容外科・皮膚科医
パラベンフリーとは、防腐剤のパラベンを配合していないことを示す言葉です。化粧水や美容液、クリームなど、ほとんどの化粧品には細菌の好む水や成分が使われており、微生物が繁殖しやすい環境のため、開封してそのままにしていると腐る恐れがあります。そうした化粧品の腐敗や変色を防ぎ、品質を保持するのがパラベンの役割です。パラベンの種類には、メチルパラベンやプロピルパラベンなどがあります。
パラベンの正式名称は「パラオキシ安息香酸エステル」で、化粧品以外に食品や医薬品の防腐剤として使用されています。最近は環境問題への関心が高まり、化粧品の原料に着目する消費者が増えていることが理由で、オーガニックコスメやナチュラルコスメが人気です。そうした影響を受けて、さまざまな化粧品メーカーからパラベンを含まない防腐剤フリーのスキンケア化粧品も発売されるようになりました。
パラベンフリー化粧品が販売されているために、「パラベンを含む防腐剤は肌によくない」と思う人は多いでしょう。また、かつてパラベンは人によってアレルギーなどの肌トラブルを引き起こす危険性のある成分=表示指定成分に入っていたことから、パラベンは危険というイメージを抱く人もいます。
しかし、パラベンは含有量が多くなくても優れた防腐効果を発揮するほか、人体に対する毒性が低いため、80年以上前から化粧品に使われている成分です。日本の化粧品基準ではパラベンの使用量の上限は1%と定められており、市販品の多くはパラベンの含有量を0.1~0.5%に抑えています。化粧品は雑菌が繁殖しやすく、長期にわたって化粧品を保存するには防腐作用のあるパラベンが欠かせません。そのため、「パラベン=悪いもの」と一概には言えないでしょう。
化粧品にパラベンを入れないことには、下記のようなメリットがあります。
<パラベンフリー化粧品のメリット>
パラベンは比較的安全性の高い防腐剤であるとはいえ、まれにアレルギーを発症する人もいます。そのため、アレルギーを起こしやすい人、刺激に敏感な人は、パラベンフリー化粧品なら安心して使うことができるでしょう。
しかし、パラベンフリー化粧品にはデメリットがあることにも注意が必要です。
<パラベンフリー化粧品のデメリット>
パラベンフリー化粧品は一般の化粧品のように豊富に展開されているわけではなく、購入先や商品はまだ限定的です。また、パラベンフリーのアイテムに含まれる、防腐効果を持つ成分との相性によっては肌荒れやアレルギーが起こる可能性はゼロではありません。パラベンを含む化粧品と違い、できるだけ早く使い切る必要があることも念頭に置いておきましょう。
「パラベンが入っていないのなら使用中に化粧品が腐るのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、パラベンフリー化粧品はパラベンを配合しなくても腐らないよう工夫を凝らしています。ここからは、パラベンフリー化粧品における3つの防腐対策について説明します。
化粧品が腐る原因の一つに雑菌の温床となる水が挙げられるので、そもそも化粧品に水を入れないことで菌の発生を防ぐことが可能です。たとえば、パウダー状の洗顔料やミネラル系のパウダー、ジェル状のクレンジングなどが挙げられます。
菌が生存・増殖するのに欠かせない水を含んでいないためパラベンを入れる必要がなく、パラベンフリー化粧品として販売することが可能です。
ボトルやパウチなど、1回で使い切れる個包装にすれば、そのまま化粧品を保管することはないので防腐剤は不要です。滅菌ルームで製造するなど、化粧品に菌が混入しないよう生産体制を整えているケースもあります。
パラベンフリー化粧品を試してみたいという場合も、小分けになっているタイプなら、気兼ねなく肌に合うかどうかを確かめることができます。
化粧品基準には防腐剤として登録されていないものの、中には抗菌作用を持つ成分もあります。そのため、パッケージなどに防腐効果・抗菌効果を表示できませんが、防腐剤の代わりとして抗菌剤となる物質を配合することもあります。防腐剤の代替として使われる成分は、「フェノキシエタノール」「BG」「ペチレングリコール」「ヒノキチオール」「エタノール」などが代表的です。
また、ローズマリーエキスやオレンジオイルなど、天然の防腐成分を配合している製品もあります。パラベンが入っていなくても、防腐剤の代わりに使用されている成分が肌に刺激となる場合があるので、パラベンフリー化粧品でも配合成分は確認しておくとよいでしょう。
パラベンフリー化粧品はアレルギーのある人・敏感の人でも使いやすいとはいえ、自分に合うかどうか判断に迷う人もいるでしょう。最後に、パラベンフリーに関連するよくある疑問に答えますので、化粧品選びの参考にしてください。
A:パラベンの有無にかかわらず、自分の肌に合う化粧品を使うほうがよいと言えます。もちろん、アレルギーや敏感肌の人は防腐剤フリー化粧品のほうが安心して使いやすい傾向にあります。しかし、パラベンが入っていないからと言って、その化粧品が絶対に合うとは限りません。
パラベンフリー化粧品は、防腐剤としてパラベンが含まれていないだけで、化粧品としての効果効能は個々の製品によります。「エイジングケアがしたい」「皮膚の水分と油分のバランスを取りたい」など、肌悩みは人それぞれです。また、普通肌・脂性肌・乾燥肌など、肌質も違います。肌悩みや肌質を踏まえて、自分に合う成分を含む化粧品を選ぶことをおすすめします。
A:フェノキシエタノール・安息香酸ナトリウム・イソプロピルメチルフェノール・サリチル酸などが挙げられます。
フェノキシエタノールは、パラベンを使わない場合の防腐剤として配合されます。安息香酸ナトリウムは、殺菌力が弱い一方で静菌効果が高いため、他の防腐剤と一緒に使われることの多い成分です。イソプロピルメチルフェノールは、医薬部外品の有効成分としても使用され、さまざまな菌に有効です。サリチル酸は植物内にある化合物で、殺菌作用のほか、炎症抑制作用も期待できます。
また、デヒドロ酢酸ナトリウム・塩化ベンザルコニウムなども殺菌効果があるため、防腐剤として化粧品に使われることがあります。
A:着色料・香料・鉱物油・アルコール・シリコン・石油系界面活性剤などは刺激性があるため、敏感肌の人は避けるほうが無難です。
着色料や香料は、化粧品の色や香りの改善に使われますが、アレルギー反応の原因になる場合があります。鉱物油は保湿効果がある一方で、毛穴トラブルになることも。アルコール・シリコン・石油系界面活性剤も刺激になりやすく、肌に負担がかかります。
そのため、敏感肌の人はパラベンフリーだけでなく、肌の刺激となる成分が入っていないかチェックするようにしましょう。
パラベンフリーとは、防腐剤の一種であるパラベンを含有していないことを意味する言葉です。水を入れない、防腐剤ではなく抗菌作用のある成分を入れるなど、パラベンフリー化粧品はパラベンを使わない方法で腐敗を防いでいます。
パラベンは毒性が低く安全性の高い成分ですが、アレルギー体質の人や敏感肌の人にとっては刺激になる可能性があります。できるだけ肌の負担を和らげて美肌を目指したい場合は、パラベンフリー化粧品を選択肢に入れるとよいでしょう。
記事の監修者
崔 煌植 医師
美容外科・皮膚科医
経歴
・元大手美容クリニック大型院 院長
・サラクラアズクリニック 技術指導医
・AND美容外科心斎橋院 院長
・「サイ先生の糸リフト塾」 代表・講師
所属
・韓国美容外科医学会 (KAAS)
・日本美容外科学会 (JSAS)
アンチエイジング・たるみ治療のスペシャリスト。
特にミドル世代からの支持が厚くファンも多い。
得意施術の「糸リフト」は症例件数10,000件以上(西日本 1位)、ベストショットアワードなど数々の賞を受賞。複数の美容クリニックで院長・技術指導医・監修医を兼任する傍ら、糸リフト実践セミナー講師として全国の美容ドクターの技術指導に携わる。