更年期に肌の乾燥やかゆみが起こりやすい原因は?対処法を解説

更年期に肌の乾燥やかゆみが起こりやすい原因は?対処法を解説

更年期に入ると、肌の乾燥やかゆみといった肌のトラブルが急に目立ち始めることがあります。顔や手足が粉を吹くようにカサついたり、ちょっとした摩擦で赤みやかゆみが生じたりと、これまでにはなかった変化に戸惑う方も少なくありません。

更年期の肌荒れは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの減少が原因の1つです。エストロゲンは、肌のうるおいや弾力を保つ成分の生成に深く関わっており、分泌量が減ると肌の水分保持機能やバリア機能が低下しやすくなります。

この記事では、更年期に起こりやすい乾燥やかゆみの原因、日常生活で取り入れやすい対策方法を解説します。

目次

  1. 更年期に起こりやすい肌の乾燥やかゆみの原因
  2. 更年期の乾燥で起こりやすいこと
    1. 肌の乾燥
    2. 肌のかゆみやひりつき
    3. 口やのどの渇き
    4. ドライアイ
    5. デリケートゾーンのかゆみ
  3. 更年期の肌の乾燥やかゆみへの対策方法
    1. 敏感肌用のスキンケア製品に切り替える
    2. 保湿を徹底する
    3. 乾燥肌によいとされる食べ物を取り入れる
    4. 睡眠の質を高める
    5. 体を冷やさない
  • 更年期の肌の乾燥がひどいときは医師に相談しよう

記事の監修者

崔 煌植

崔 煌植 医師

美容外科・皮膚科医

 

更年期に起こりやすい肌の乾燥やかゆみの原因

更年期に肌の乾燥やかゆみが起こりやすくなるのは、閉経に伴い女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少するためです。

エストロゲンは、肌に潤いや弾力をもたらすコラーゲンの生成を促す働きがある物質です。しかし、40代後半から始まる更年期では卵巣の機能が低下して、エストロゲンの分泌量が大きく減少します。

肌のバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなるため、些細な刺激でもかゆみや湿疹が出やすくなります。

さらに、加齢により皮脂や汗の分泌量も減少することから、肌のうるおいは一段と失われやすくなり、乾燥やかゆみが強くなりがちです。

 

更年期の乾燥で起こりやすいこと

更年期の全身が乾燥しやすくなる状態は「ドライシンドローム(乾燥症候群)」と呼ばれ、肌荒れだけでなく、目や口、デリケートゾーンの粘膜にまで広がることがあります。

以下では、更年期にみられやすい代表的な乾燥について詳しく解説します。

 

肌の乾燥

更年期に入ると、肌全体の水分量や皮脂量が減少し、乾燥しやすくなります。特に顔、手足、すねなどの皮膚はカサつきやすく、粉を吹いたような状態になるケースも見られます。

肌の表面がざらつき、化粧ノリが悪くなる、ファンデーションが浮くといった変化に気づく方もいるでしょう。また、肌が薄くデリケートになるため、小さな摩擦でも赤みやひび割れが起こりやすくなります。

乾燥が進行すると、角質層がめくれ、衣類が擦れるたびに不快感を覚えるようになる場合もあります。乾燥は慢性的に続きやすく、日常生活にも影響を及ぼす恐れがあります。

 

肌のかゆみやひりつき

肌が乾燥すると、衣類の縫い目や素材、寝具との接触、空気の乾燥などによって皮膚が反応し、チクチクとした痛みや、むずがゆい感覚が生じることがよくあります。特に夜間、体温が上がるタイミングでかゆみが強まり、睡眠を妨げられるケースも見られます。

顔や背中、二の腕などにじんましんや湿疹が現れることもあり、皮膚のかゆみが精神的なストレスにつながるケースも少なくありません。

乾燥がひどくなると、夜間にかゆみで眠れなくなったり、掻き壊して肌荒れが悪化するなど、悪循環に陥る恐れもあるため、早めの対策が重要です。

 

口やのどの渇き

更年期には唾液の分泌が減少し、口の中やのどに乾きを感じやすくなる「ドライマウス」を起こす方もいます。ドライマウスとは、口腔内の粘膜が乾くことで、舌がヒリヒリしたり、食べ物が飲み込みにくくなったりする状態です。

乾燥によって口の中がネバつきやすくなり、話しにくさや味覚の鈍化といった影響が出ることもあります。特に起床時に強く感じられることが多く、「寝ている間に口を開けていたのかも」と感じる方もいます。

ドライマウスが続くと、唾液が減ることで口腔内の自浄作用が弱まり、細菌の繁殖環境が整いやすくなって、口臭や虫歯、歯周病のリスクが高まるのも問題です。

 

ドライアイ

更年期には目が乾燥し、涙の分泌量が減ることで、目の表面が乾燥し、ゴロゴロとした異物感やかゆみ、充血、ショボショボ感といったドライアイも発生します。

朝起きたときにまぶたが重く感じられたり、目を開けるときに痛みを感じることもあります。乾燥した空気、パソコンやスマートフォンの長時間使用、コンタクトレンズの装用などもドライアイを悪化させる要因です。

また、急に涙が出たり、まばたきが増えるなどの反応が起きることもあります。これは目が乾燥状態にあることへの生理的な防御反応であり、視界がかすむ、目が疲れやすくなるケースもあります。

 

デリケートゾーンのかゆみ

デリケートゾーンの皮膚や粘膜も、エストロゲンの減少によって潤いを失いやすくなります。更年期には膣や外陰部が乾燥し、皮膚が薄くなることで摩擦や圧迫に弱くなります。

結果、下着のこすれや締め付け、ナプキンなどの使用によってかゆみやピリピリ感を引き起こすことがあります。皮膚に赤みが出たり、乾燥に伴って小さなひび割れや出血を伴う方もいます。

さらに、乾燥により膣の自浄作用が低下すると、細菌感染が起こりやすくなり、炎症や違和感の悪化につながるケースも見られます。日常の動作で不快感を覚えたり、座っているだけでも刺激を感じるようになることもあるため、更年期の方が強い悩みを覚えやすい原因の1つです。

 

更年期の肌の乾燥やかゆみへの対策方法

更年期には肌質が変わり、乾燥肌やかゆみが起きるため、これまで以上に肌の潤いをサポートする対策が必要になります。

以下では、乾燥やかゆみを抑えたい方に向けて、スキンケアや保湿のほか、生活習慣を変えることによる対策方法を解説します。

 

敏感肌用のスキンケア製品に切り替える

更年期はホルモンバランスの変化により、肌のバリア機能が低下しているため、これまで使用していたスキンケア製品では刺激が強く感じることもあります。そのため、保湿力が高く低刺激なタイプのスキンケア製品への見直しが必要です。

最近は、LPSやセラミド、ヒアルロン酸などを配合したスキンケア製品も注目されています。

加えて、洗顔やクレンジングの際は、強くこすらずに優しく洗うことが大切です。また、32~33℃程度のぬるま湯で丁寧にすすぎ、洗い残しがないようにすることで、肌への負担を抑えられます。

 

保湿を徹底する

更年期の肌にとって重要なケアの1つが、十分な保湿です。

保湿をするためには、化粧水・美容液・クリームといった異なる役割を持つスキンケアアイテムを重ねるとよいでしょう。化粧水で水分を与え、美容液で潤いを閉じ込め、クリームで膜を作ることで、水分の蒸発を防ぎながら保湿力を持続させられます。

お風呂上がりは、肌が最も乾燥しやすいタイミングの1つです。入浴後は3分以内に保湿ケアを始めることで、水分の蒸発を最小限に抑えましょう。

また、入浴自体にも注意が必要です。熱いお湯は皮脂を過剰に洗い流し、肌の乾燥を招く原因になります。38~40度程度のぬるめのお湯に短時間浸かることを意識し、体を洗う際には毎回ボディソープを使うのではなく、ぬるま湯で軽く流す日を取り入れるのも有効です。

加えて、紫外線は水分を蒸発させ、肌の乾燥の原因になるため、日焼け止めや手袋、サングラスなどで紫外線対策を徹底するとよいでしょう。

 

乾燥肌によいとされる食べ物を取り入れる

肌の潤いを保つには、外側からのスキンケアと同様に、体の内側からのケアも欠かせません。特に食事は、肌の構成要素となる栄養を供給する重要な手段です。偏った食生活や過度なダイエットは栄養バランスを崩し、乾燥や肌荒れを招く原因になりやすいため注意が必要です。

乾燥肌の予防に効果的とされている栄養素には、セラミドやビタミンA・Cが挙げられます。セラミドは肌のバリア機能を高める働きがあるとされる成分で、生芋こんにゃくやとうもろこしなどに含まれています。

また、にんじんやかぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に含まれるビタミンAは、不足すると肌や粘膜の乾燥につながる栄養素です。油と一緒に調理すると吸収率が上がるため、炒め物などがおすすめです。

ビタミンCはコラーゲンの生成に必須となる成分で、かんきつ類やキャベツ、ブロッコリーに含まれています。

肌の水分量を維持するためにも、日々の食事から栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

 

睡眠の質を高める

夜間の睡眠中には肌のターンオーバーをケアする成長ホルモンが分泌されます。しかし、ホルモンの働きが弱まると、角層の生まれ変わりが遅れ、乾燥やかゆみなどが起こりやすくなります。

睡眠不足や浅い眠りが続くと、肌の修復が追いつかず、バリア機能の低下にもつながるため、寝る前のスマホ操作やカフェイン・アルコール摂取は控えましょう。

また、眠る前にリラックスできる環境を整えることも重要です。照明を落とし、静かな空間で過ごすことで入眠がスムーズになります。加えて、長時間の昼寝を避け、毎日同じ時間に寝起きすることで体内時計を整えると、成長ホルモンの分泌が安定しやすくなります。

 

体を冷やさない

更年期に感じやすい体の冷えも、乾燥肌の原因の1つです。体温が下がると血行が悪くなり、肌に十分な栄養や酸素が行き届かなくなるため、ターンオーバーが乱れ、古い角質が肌に残りやすくなってかゆみや肌のざらつきを起こします。さらに、冷えによる血行不良は皮脂腺の働きにも影響を与え、皮脂の分泌が減ることで乾燥が進行する傾向があります。

冷えを防ぐには、体を内側から温めることが大切です。1日15分程度の軽い運動やストレッチを習慣化すると、血流が改善され、肌にも潤いが戻りやすくなります。ウォーキングや階段の昇降といった無理のない運動を継続することは、乾燥対策だけでなく、更年期の体調全体の改善にもつながります。

 

更年期の肌の乾燥がひどいときは医師に相談しよう

更年期に現れやすい乾燥やかゆみなどは、ホルモンバランスの変化により、肌の水分保持機能やバリア機能が低下することで生じます。顔や手足、目や口の粘膜、デリケートゾーンにまで影響が広がることもあり、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。

更年期に入った方は、肌への刺激がより少ない化粧品やスキンケア製品を選び、保湿を徹底することが大切です。また、食事や睡眠、冷え対策といった生活習慣の見直しも、肌の悩みに向き合うための有効な手段となります。

その上で、対策を講じても状態が思わしくない場合や、強いかゆみが続く場合は、早めにかかりつけ医に相談し、婦人科や皮膚科などの診察を受けましょう。

記事の監修者

崔 煌植

崔 煌植 医師

美容外科・皮膚科医

経歴
・元大手美容クリニック大型院 院長
・サラクラアズクリニック 技術指導医
・AND美容外科心斎橋院 院長
・「サイ先生の糸リフト塾」 代表・講師

所属
・韓国美容外科医学会 (KAAS)
・日本美容外科学会 (JSAS)

アンチエイジング・たるみ治療のスペシャリスト。
特にミドル世代からの支持が厚くファンも多い。
得意施術の「糸リフト」は症例件数10,000件以上(西日本 1位)、ベストショットアワードなど数々の賞を受賞。複数の美容クリニックで院長・技術指導医・監修医を兼任する傍ら、糸リフト実践セミナー講師として全国の美容ドクターの技術指導に携わる。

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